スルジャン・スパソイェビッチ『セルビアン・フィルム』感想

■「セルビア映画」 『セルビアン・フィルム』を褒めるなら、タイトルがよいということに尽きる。このことを、できるだけ丹念に話したい。 なぜこのタイトルにしたのかという問いは、封切り以降世界中で盛んに投じられ、製作者たちの回答も一定の蓄積がある。…

3-2)浪江女子発組合について知っていること(2)/『ももクロ春の一大事 2022』に寄せて

◎中期:Withコロナでの有観客イベント模索期 ここでの中期とは、Withコロナの状況下でも、やりかたを工夫しながら有観客イベントを再開していった暗中模索の時期を指す。 浪江女子発組合は、2020年10月31日 立川ステージガーデンで有観客イベント『浪江発立…

3-1)浪江女子発組合について知っていること(1)/『ももクロ春の一大事 2022』に寄せて

この文章では、前回までに書いた浪江町についての知見と、浪江女子発組合のいわゆる「オタク」としての知見を紐づけながら、彼女らについて知っていることを書いていきたい。 ■浪江女子発組合結成の経緯 浪江女子発組合の結成をめぐって、あまりはっきりとし…

2-2)偉大なる浪江町(2)/『ももクロ春の一大事 2022』に寄せて

■産業振興(課) いまの浪江町の産業の話を書く。 これは、浪江町役場 産業振興課の取り組みの話でもある。 産業振興課は、浪江女子発組合および『ももクロ春の一大事』を管掌している。 産業振興課というパートナーがどういったことに取り組んでいるかは、…

2-1)偉大なる浪江町(1)/『ももクロ春の一大事 2022』に寄せて

■浪江町の概要 浪江町は、福島県の浜通り(太平洋沿い)にある町――というのは、あまりにもいまさらすぎるとして、まずは、近世~近代の成り立ちを簡単になめる。 江戸時代、現在の浪江町の中心市街地に位置する権現堂地区は「高野宿」と呼ばれ、宿場町を形成…

1)『ももクロ 春の一大事』について知っていること/『ももクロ春の一大事 2022』に寄せて

一つ前の記事で、浪江町について書くことの心構えを語ったが(恥ずかしい)、まずは『ももクロ 春の一大事』について――それも特に、『笑顔のチカラ つなげるオモイ』が冠せられた、自治体共催型になったそれについて、自分の知っていることを書いていく。 ■…

0)はじめに/『ももクロ春の一大事 2022』に寄せて

■浪江町の風景をめぐる2つの視座 2020年2月7日にNHKで放送された『ドキュメント72時間 福島・浪江 年の瀬、ふるさとのスーパーで』を見たとき、印象に残った場面がある。 www.nhk-ondemand.jp ある浪江町出身の男性が、解体予定の実家へ、他地域出身の妻…

ポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』感想

■糞の話 20世紀最大の心理学者ジャン・ピアジェは、人間の知能発達を、<同化⇔調節>のプロセスとして定式化した。 市川功『ピアジェ思想入門 ―発生知の開拓―』P48 人間が各々持つ認知の枠組みを「シェマ」と呼ぶ。 人間は、生きながら新たな知見を得ると、こ…

『永野と高城。Vol.3』感想

『永野と高城。Vol.3』全6公演のうち、2019年10月26日(土)昼の部を見てきた。 賛辞の意を込めて「本当に酷い」コントばかりだったという話と、このお笑いライブは「美しかった」という話を書く。 1)本当に酷いコントばかりだった話 披露されたコントのタイ…

ももいろクローバーZ 舞台『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』感想(第ニ幕) #DYWD

■ヘヴン成長期 ヘヴンを結成した彼女らは、第二幕でももクロ楽曲によるライブを立て続けに行う。 現実そのままの振り付けで再現されるが、それはライブではなく、あくまでもライブの演技である。 高城:歌う部分はあくまで役の中の私たちがやっていることで…

ももいろクローバーZ 舞台『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』感想(第一幕) #DYWD

■プロローグ で、順に展開を舐めていくと、ファンとしては、まず先に語った交通事故に見舞われるイントロダクションで泣いてしまう。 落差がすごい。 翌日のダンスコンクール決勝を控え、みんな軽い躁状態になっている。 カナコは、勉強ができない。 いわゆ…

ももいろクローバーZ 舞台『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』感想(導入) #DYWD

いま、ももクロが舞台というか、ミュージカルが絶賛やっててさ。 『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』っていうタイトルのを。 舞浜アンフィシアターっていう本来シルク・ドゥ・ソレイユ用に作られた劇場で。 9月下旬〜10月上旬にかけて、合計19公演やるわけなんだ…

【NY】ももいろクローバーZ 「アメリカ横断ウルトラライブ」感想(4/4)

11/19 NYでは朝から昼過ぎにかけて、MOMAに行き、長年書籍でよく慣れ親しんできた近代美術の数々を生で鑑賞した。下記のツイートにある現地の人たちの感動を、俺は美術で味わってきた。現地の人の話で1番心に残ったのは、ずっと円盤とかを見ててやって欲しい…

【LA】ももいろクローバーZ 「アメリカ横断ウルトラライブ」感想(3/4)

アメリカツアー三箇所とも演出・セットリストに大きな違いはない以上(※)、ハワイの感想が大枠をすでに果たしている。 LAとNYは、差分を主に語る。※今回の演出・セットリストが練りに練り上げられた解であることは、ハワイの感想に書いたとおりよくよく実感…

【Hawaii】ももいろクローバーZ 「アメリカ横断ウルトラライブ」感想(2/4)

11/15 14時ごろ、ホテルにチェックインし荷物を置いたら、ペンライトとiPhone、モバイルWi-Fiだけの身軽な格好で(すなわちそれを手に握っただけの全裸の状態で)ハワイのライブ会場であるRepublikに向かった。途中、Twitterで人様のつぶやきを検索し、開場…

【はじめに】ももいろクローバーZ 「アメリカ横断ウルトラライブ」感想(1/4)

さる4月2日、ももクロはドームトレック2016千秋楽の西武ドームday1で、ハワイ、ロサンゼルス、ニューヨーク三箇所によるアメリカツアーを今年11月に行うと発表した。 この発表を西武ドームで聞いたとき、「あー、ついに来たな」と思った。元々こういうツイー…

ももいろクローバーZ 舞台『幕が上がる』感想

先日、菊地成孔がジャズミュージシャンの立場として映画『セッション』が許せないと、1万6千文字の感想(=批判)を書いていた。 スマホでいくらスクロールしても、右側のスクロールバーが水銀の体温計程度のプルプルした動きしか見せない。 長え〜(笑)と…

ももいろクローバーZ 映画『幕が上がる』感想(3/3)

■この映画がももクロに何をもたらしたか前提に立ち返ると、俺はこの映画を"ももクロのため"に見た。大事なのは、この映画が作られたことが、ももクロにとって良かったかどうか、でしかない。 俺が映画を心から楽しめなかったことなど、本来些末な問題に過ぎ…

ももいろクローバーZ 映画『幕が上がる』感想(2/3)

■映画の感想俺が『幕が上がる』の映画化に期待したところは、あの「転回」の構造的な美しさをえがけるか、だった。 それをももクロが演じたら、どれだけ素晴らしい映画になるだろう…。 先行で公開された『走れ -Zver-』のPVの素晴らしさも、一層期待を煽って…

ももいろクローバーZ 映画『幕が上がる』感想(1/3)

俺は、ももいろクローバーZを愛している。さる昨年10月末、映画『幕が上がる』の制作が発表され、先行的にエンディングテーマ『走れ -Zver-』のPV(パイロット版)が公開されたとき、その美しい映像に涙しながら「俺はこの映画を、本気で、見よう」と心に誓…

4)-総論- 私は生涯結婚すべきでないことの証明

定義1.私は、「自分は自分が生かすべき」という倫理観を強固に有している。定義2.女性はごく例外を除き、「結婚」が代表する非対称型の人生設計モデルを採用している。〜〜〜定理1.「定義1」と「定義2」の不一致につき、私は女性の大半を、自らと同…

3)女性は人間ではない

俺は社交性に欠いているが、それでも生涯通して会話をしてきた女性は何百人といる。一度は性に絶望した人生だったが、ある時期「もしかしたら自分もやはり恋愛できるのではないか」という望みを胸に、女性と交際したことだってある。 セックスは気持ちがいい…

2)文物主義

上述のとおり、俺は中学生のとき精神の危機に瀕していた。あのときの孤独感は、骨折したときの痛みに近い。 毎分毎秒、自我を崩落させるほどのつらさが希釈なく襲いかかってくる。 このつらい時間を埋めてくれる何かがないと"死ぬ"と感じたとき、細かいこと…

1)個人主義

幼いころ、多動児だった。 あまり多くは語りたくないが、頭が悪いことと不潔であることを極めていた。俺はハゲている。 ハゲデビューは早く、小学3年生あたりから頭頂部が薄い。 当時はJリーグ全盛期だったので、運動音痴な俺を指して、よく「サッカーので…

0)女性を人間と呼べるかどうかはまだ議論の余地があるだろうが、俺が生涯結婚すべきでないことに疑いの余地はない。

俺はよくTwitterで女性を叩く。 女性という生き物を軽蔑し、憎らしく思っているからだ。 そして同時に、女性に劣情をもよおす。 軽蔑しながら勃起している。勃起は、すごい。 勃起は自律神経だから、理性とリンクしていない。 たとえばエロ本に載っている全…

恋バナ

Twitterを始めるよりも前、mixiを利用していたころは、このブログにたまに書くような長い文章を、よく日記として書いていた。当時は一桁台のマイミクたちに向けて、「お前たちは新着日記のリンクカラーの青を見たら、俺に興味がないくせに、その青をクリック…

イギリスへワーキングホリデーに行っていた友人の話

インターネットを介さずに知り合い、いまも仲良くしている友人は二人しかいない。 そのうちの一人は、つい最近までイギリスへワーキングホリデーに行っていた。 ※ロゴは俺が勝手につけた。彼はカメラマン志望であり、日本で5〜6年、カメラマンが集うスタジオ…

リドリー・スコット『悪の法則』感想

サド侯爵のソドミーな文学について語られるとき、ラカンやドゥルーズ、あるいはアドルノ&ホルクハイマーにおよぶまで、いつも厳格な道徳法則を説いたカントが援用される。サド文学では、通常なら「悪」と判断される変態行為に関して、主人公にあたる人物が…

あーりん

映画を観るようになったいきさつ

俺は、物心がついたときから映画を熱心に観てきたような人間ではない。7〜8年前だったか、一回り年上の女性に恋をした。その女性は文化に明るかった。漫画、音楽、小説、映画、演劇あらゆるジャンルにわたって通暁している“サブカルのリベラルアーツ”だった…