映画

スルジャン・スパソイェビッチ『セルビアン・フィルム』感想

■「セルビア映画」 『セルビアン・フィルム』を褒めるなら、タイトルがよいということに尽きる。このことを、できるだけ丹念に話したい。 なぜこのタイトルにしたのかという問いは、封切り以降世界中で盛んに投じられ、製作者たちの回答も一定の蓄積がある。…

ポン・ジュノ『パラサイト 半地下の家族』感想

■糞の話 20世紀最大の心理学者ジャン・ピアジェは、人間の知能発達を、<同化⇔調節>のプロセスとして定式化した。 市川功『ピアジェ思想入門 ―発生知の開拓―』P48 人間が各々持つ認知の枠組みを「シェマ」と呼ぶ。 人間は、生きながら新たな知見を得ると、こ…

ももいろクローバーZ 映画『幕が上がる』感想(3/3)

■この映画がももクロに何をもたらしたか前提に立ち返ると、俺はこの映画を"ももクロのため"に見た。大事なのは、この映画が作られたことが、ももクロにとって良かったかどうか、でしかない。 俺が映画を心から楽しめなかったことなど、本来些末な問題に過ぎ…

ももいろクローバーZ 映画『幕が上がる』感想(2/3)

■映画の感想俺が『幕が上がる』の映画化に期待したところは、あの「転回」の構造的な美しさをえがけるか、だった。 それをももクロが演じたら、どれだけ素晴らしい映画になるだろう…。 先行で公開された『走れ -Zver-』のPVの素晴らしさも、一層期待を煽って…

ももいろクローバーZ 映画『幕が上がる』感想(1/3)

俺は、ももいろクローバーZを愛している。さる昨年10月末、映画『幕が上がる』の制作が発表され、先行的にエンディングテーマ『走れ -Zver-』のPV(パイロット版)が公開されたとき、その美しい映像に涙しながら「俺はこの映画を、本気で、見よう」と心に誓…

リドリー・スコット『悪の法則』感想

サド侯爵のソドミーな文学について語られるとき、ラカンやドゥルーズ、あるいはアドルノ&ホルクハイマーにおよぶまで、いつも厳格な道徳法則を説いたカントが援用される。サド文学では、通常なら「悪」と判断される変態行為に関して、主人公にあたる人物が…

映画を観るようになったいきさつ

俺は、物心がついたときから映画を熱心に観てきたような人間ではない。7〜8年前だったか、一回り年上の女性に恋をした。その女性は文化に明るかった。漫画、音楽、小説、映画、演劇あらゆるジャンルにわたって通暁している“サブカルのリベラルアーツ”だった…